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音楽にかんすること。

my essential 50 albums (1〜25)

20歳になったので、この機会に自分の人生で(おもに高校生の頃)よく聴いたり、心の支えになったアルバムを50枚(1アーティスト1アルバム)、エピソードや所感も含め紹介したいと思います。思い入れの強さでランキング形式にしてもよかったんですが、収拾がつかないのでアルファベット順に。高校当時に書いた各アルバムの所感みたいなのも見つかったのでそれも合わせていれときます(※マークが当該文章)。

 

1. American Football - American Football (1999)

American Football

American Football

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 American Footballの1st。高1の冬にamazonで注文していつまで経っても届かないなと思ってたら、イギリスから15周年盤が送られてきてびっくりした思い出。ポストロック関連で行き着いたアルバムだと記憶している。まずなにより音が良い!そしてアルペジオがとにかく美しい。どうやってこんな奇跡的なチューニングを見つけたのか。尺の4分の3以上をリフレインに使う「Honestly?」がまだるっこい残暑と未練がましい感情を重ねるようで素晴らしい。結部30秒のツインギターもほんとに良くて。一度「The Summer Ends」で小説を書こうとしたことがあったが、失敗する未来しか見えなくてやめた。歌を積極的に入れないところもいい。

 

2. androp - anew (2009)

anew

anew

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 andropの1st。高校当時の邦ロックを軒並み下に見ていた最悪の時期があって、これはそんな時期に聴いた一枚。まあすごい。もう11年前の作品とは信じられないクオリティ。「Tonbi」が滅茶苦茶好き。このメロディにこの歌詞。そして歌が上手すぎる。7曲25分のEPではあるが決して聴き飽きない。なにより僕の邦ロックに対する苦手意識を打ち破ってくれた一枚でもある。「カーマスートラ」をこんな文脈で使えるバンドはandrop以外にはない。

 

3. Arctic Monkeys - Whatever People Say I Am, That's What I'm Not (2006)

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 Arctic Monkeysの1st。死ぬほどリピートしていた。友達と遊びに行くときもリピートしていた。この歳でこの歌詞を書けるアレックス・ターナーは化け物。ギターソロのない曲構成、ラップのように早口で唾を飛ばすボーカル、身辺の取るに足らない些事を切り取る鋭利な詞。すべてが新鮮で、「これが今のロックか!!!」と電車でビックリした思い出(というのも初めて聴いたときはリリースから10年も経ってた頃なので新鮮だかなんだかも変な話だが)。「From the Ritz to the Rubble」なんか、クラブから追い出されただけの歌詞なのにどうしてこうもクールなのか。一番好きなのが「When the Sun Goes Down」。たった3分足らずで語られる売春婦とおっさんと「僕」の話。ナンバーガールの「性的少女」と並んで大いに影響を受けた。『トレインスポッティング』の印象と被るところも多い。高校時代とこの一枚は切っても切り離せない。

 

4. ASIAN KUNG-FU GENERATION - ソルファ (2004)

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 アジカンの2nd。『ファンクラブ』も『ワールドワールドワールド』も大好きなのだが、一応これに。高1の頃音楽を聴くとなって何から聴けばいいかわからず、とりあえず中古店で見つけたこのアルバムを聴いて、Weezer的なパワーと繊細さによくわからんながらも圧倒された、という感じ。何度でも聴ける。「Re:Re:」→「24時」→「真夜中と真昼の夢」の流れがとにかく良くて。全部シングルカットされてもおかしくないハイセンスの楽曲が完璧な曲順で並んでるので名盤に決まってるんだよな……。個人的には最後はやっぱり「ループ&ループ」しかない。僕たちはこのアルバムを文字通りループするしかなくなる。

 

5. At The Drive-In - Relationship of Command (2000)

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 At The Drive-Inの3rd。エモ-ハードコアの代表的なバンドというか。まあ恐ろしくかっこいい。「Arcarsenal」は当時ビビった。ただ僕はこのアルバムからは音像にかんすることしか言えない。「Invalid Litter Dept.」「Enfilade」「Rolodex Propaganda」という曲名からしてよくわからないし、歌詞を読んでもやはりよくわからない。どこかで「One Armed Scissor」は共産主義批判の曲だというのを読んだことがあるが、それでも不明確な部分が多いし……という部分を抜きにしても、2020年に通じる格好良さがある。日本盤ボーナストラックの「Catacombs」という曲がめっぽうかっこいい。ハードコアパンクの傑作。

 

6. Bastro - Sing The Troubled Beast (1990)

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 Bastroの2nd。Bastroは3ピースのバンドで、その後TortoiseThe Sea and Cakeのメンバーとなるジョン・マッケンタイアがいたバンドなのだが、まあ非常に巧緻な音楽をしてて。活動時期的にBitch MagnetやCodeineなんかのポストハードコアバンドの一つとして数えられる。演奏が超上手い。「Kraknow, Illinois」なんかハイハットが人間業じゃない。一番好きなのは「Recidivist」。高校当時の僕はメタルともロックとも異なる第三勢力としてポストハードコアを聴いていた気がする。それでここからマスロック、ポストロックには容易に接続できる。激しさをもちながらなんだか冷めた感じが好きだったのかもしれない。

※本作は徹頭徹尾冷酷さにつきる。ジャケットにみられる雰囲気が音楽に落とし込まれていて、生身の人間らしさはあるが、とにかくこちらからは遠く薄暗いところにあるように感じられるのである。まるで意図のくめない歌詞、一分以上も鳴り続けるノイズが、とてもいい。僕のとっての音楽のかっこよさ、鬱屈とした空気が漂うよいアルバム。

 

7. The Beatles - Revolver (1966)

Revolver

Revolver

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 ビートルズの7th。ビートルズで一番好きなアルバム。サイケ感が程良くて良い感じ。「I'm Only Sleeping」ほんとに好きで(授業中寝てばかりいたから)自分で訳して短編に挟もうとしたくらい。「Good Day Sunshine」も美メロが過ぎるし、「And Your Bird Can Sing」も本当にいい。「Got to Get You Into My Life」や「Penny Lane」みたいなビートルズの底抜けに明るい曲が好きなのだが、もしかしたらその裏に終わりの雰囲気を感じ取っているからかもしれない。最後が「Tomorrow Never Knows」で締められるのもいい。下手したら13曲全部この曲のための前座という気がしてくる。ビートルズの普遍性は衰えない。

 

8. Beck - Mellow Gold (1994)

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 Beckの1st。安っちい感じがたまらない。ベックは『Sea Change』も『Colors』も好きだけど、一番最初に聴いたというので印象が強い。声だけ聴いて「おっさんが歌ってんのかな」と思ってネットで調べてみたらすごい童顔で最初は驚いた。なぜこれが好きなのかいまだにわからないが、当時自分でも負け犬意識みたいなのは感じていたらしい。「Whiskeyclone, Hotel City 1997」が好きで、これをベースに短編を一本書いたことがある(noteに公開してます)。ゴミ溜めから拾い上げてきたような音像が新鮮だった。同年にインディーズレーベルからリリースされた『One Foot in the Grave』も音が汚くていい。ペイヴメントからローファイみたいな触れ込みでベックを聴き出したように思うが、正直それを抜いてもメロディセンスは突出している。

※むしろこのチープさが癖になって何度も聴きたくなる。演奏する本人が楽しそうなのでこっちもうきうきしてくる。カントリーミュージックというかインディーロックというか、ベック本人がたどってきたルーツはまったく知らないけども、次作『Odelay』にみられる闇鍋感がほぼ無加工の状態で聴けるため、ハマると抜け出せなくなる。

 

9. Big Black - Atomizer (1986)

Atomizer (Remastered)

Atomizer (Remastered)

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 Big Blackの1st。これを聴くと目つきが変わる。Big Blackを聴いたときの衝撃は凄まじかった。高2の頃だった。パンク・ハードコアにドハマりして様々な音源を集めていたとき、アルビニのバンドだというんで手を出したが、とても30年以上前のアルバムとは信じられない。アメリカのタブーをえぐり出すExpelicitマークだらけの歌詞、鋼を削り取るようなTravis Beanの音、異様に怖い顔のアルビニ。「Kerosene」はイントロからして衝撃だった。こんなギターの音像をアルビニは30年も前に通過していたのだと。やることなんてなにもない、灯油を頭から被って死ぬだけだと、通学しながら真面目に考えていた。必聴盤。

アルビニの書く歌詞はアメリカの抱える問題、人種差別、銃社会児童虐待汚職、異常性愛、精神疾患、感染病、などに基づいており、あまり耳障りの良いものではない。一曲目の「Jordan, Minnesota」は、実際にミネソタ州で起きた児童虐待に取材しており、「Kerosene」は娯楽のない田舎で焼身自殺を遂げようとする若者、「Fists of Love」はそのままフィストファックについて歌っている。社会への怒り、憎しみ、悲しみが、鉄を削るような音をしたギターに表現されているようにも思える。あまりにも無機的なドラムマシンが、『Atomizer』に通底したある種の虚無感を想起させてならない。いま聴いても、充分に熱量を感じられる作品である。

 

10. Bôa - The Race of a Thousand Camels (1998)

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 Bôaの1st。lainのOPテーマで有名なバンド。「Duvet」はアニソンでも一番といっていいほど好きな曲で、90年代末期の退廃的な雰囲気と、鬱屈しながら安心できるダウナーな曲調が中3のときの自分にすごくマッチしていた。このアルバムの曲も佳曲だらけで、リンクを貼った「Welcome」がひじょうに素晴らしい。とても落ち着ける。2005年に出た『Get There』も好きで、「Passport」という曲が凄いのでとにかく聴いてくださいとしか言えないが、解散してしてしまったのが惜しまれるバンド。

 

11. Built to Spill - Keep It Like a Secret (1999)

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 Built to Spillの4th。USインディーでも特に人気が高い。メロディーセンスが良すぎる。「The Plan」の完璧な出だし。「Center of the Universe」のユニークさ。そして「Carry the Zero」。「Carry the Zero」とても好きで、これと bloodthirsty buthcersの「7月」は自分の中で同じ印象をもつ。最後の最後で一番盛り上がる展開が来るので感情に危ない。なにかが終わったあとの音楽なのだが、もしかしたらまだ始まってすらいないのかもしれない。Built to Spillはギターがとにかく良くて、その意味で正真正銘のギターポップをしている。「Time Trap」の2分近いイントロなんてすべてが素晴らしい。空間の使い方に長けたバランスのいい一枚。

 

12. cero - Obscure Ride (2015)

Obscure Ride

Obscure Ride

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 ceroの3rd。まぁ〜〜〜〜感情に来る。D'Angeloモロオマージュの「C.E.R.O」に続く「Yellow Magus」がめちゃくちゃ良い。高城昌平の作詞の才能が恐ろしすぎる。「Summer Soul」もとても好き。ただオシャレな音楽というだけじゃなくてそこに一捻り加えられてるのがいいというか。ケルアックの『路上』的な移動のための移動という感じの歌詞や、そうかといって「Narcolepsy Driver」みたいに居場所を剥奪されてそこにとどまらざるを得ない状況下の歌詞もあり、楽観的ぽくて、実はぜんぜん楽観的な雰囲気にない、というところが好きなのかもしれない。

 

13. Coldplay - Parachutes (2000)

Parachutes

Parachutes

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 Coldplayの1st。めちゃくちゃ聴いた。コールドプレイで一番好き。初期のダウナーで、小動物が食われるのを恐れて土の中に逃げ込む雰囲気が好きだった。「Spies」がそれに一番近いか。いたるところにスパイが潜んでいるんだという被害妄想的な歌詞。共依存の2人が身を寄せ合う感覚。「We Never Change」もいい。コールドプレイは変化しないことを肯定してくれる。通学時の電車の中でこれを聴きながら寝るのが日課だった。正直今のコールドプレイはキラキラしまくってて好きな感じではないです……。

 

14. The Dillinger Escape Plan - Calculating Infinity (1999)

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 DEPの1st。これも衝撃だった。脈絡のないギターフレーズを次々に使い捨てたり、分裂病みたいにいきなり静かになったり、マスロック的な面があったり……フロントマンがメタラーZAZEN BOYSというか。次作の『Miss Machine』からボーカルがグレッグ・プチアートに変わって、そっちのほうが技術的な面でもアップしてるんですけど、こっちのほうがなんとなく好み。高校当時の自分は静と動を繰り返して緊張感を高めるバンドをすごく評価してて、これもその一つだった気がする。なによりシャウトのある音楽は格好いい。自分の代わりに叫んでくれるボーカルを必要としていたのかもしれない。この激しさに対する期待はどんどんエスカレートして最後にはグラインドコアにまで行き着くのだが、それはまた別の話……。

 

15. The Dismemberment Plan - Emergency & I (1999)

Emergency & I

Emergency & I

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 The Dismemberment Planの3rd。これもまぁ〜〜〜〜〜好き。音楽というのは基本的に聴く側のテンションを選ぶ傾向があって、それが昂ぶっているときはハードコア、スクリーモだったり、逆に落ち着いているときはダウナー寄りだったりするのだが、このアルバムの凄い点は決してそんなテンションを選ばないところにある。どんなときでもニュートラルにフラットな状態で聴ける。その意味で人間の感情が全部ここにあるといってもいい。「Spider in the Snow」好み。全部変拍子の曲だが違和感がないので凄まじい。90年代末期にこのセンス持ってるの異常すぎるな。飽きずに何度でも聴ける名盤。

 

16. Don Caballero - Don Caballero 2 (1995)

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 Don Caballeroの2nd。アイコンにもしている一枚(ジャケットが好きなので)。ギターがバトルスに似てるな〜〜と思ったら実はギタリストが解散後バトルスに加入してたりする。デーモン・チェのドラムが良過ぎる。曲名もすばらしい。「Please Tokio, Please This is Tokio」なんかエモいリフが挟まれるし。どの感情を生起させるべきか迷うという点でドンキャブの音楽は実験的なのかもしれない。曲の4分以上をノイズで埋めたり、脈絡のない展開で繋ぐのは、よく理解できないながらもクールさを感じた。

 

17. downy - 第三作品集 (2004)

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 downyの3rd。変拍子・分裂症的・反復。好きな要素だらけなので聴かない理由がない。全体にダウナーな空気が漂う。Radioheadっぽいと言われるが、正直Radiohead臭さはどこにも感じられない。ポストロック+ハードコア的。鐘のようなギターの音と呪詛のような日本語ボーカルがなんらかの予兆を感じさせる。ドラムが3点(スネア・キック・ハイハット)だけで成り立っているのも良い。10年以上も前にこんな音楽が日本にあったという時点で邦ロックはまだまだ安泰。

 

18. eastern youth - 感受性応答セヨ (2001)

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 eastern youthの8th。日本で一番涙腺に危ないバンドのひとつ。「エモい」の全てがある。3ピースとは思えん音の厚み。一分の隙もない楽曲構成。アジカンが影響を受けるのも頷ける。高3の時期か。受験勉強でクタクタになっていた心にだいぶ効いた。朝の電車の中「踵鳴る」を聴きながら泣いた覚えがある。今でもライブ映像を見たら普通に泣いてしまう。「OMOIDE IN MY HEAD」と並んで無条件に泣いてしまう曲。歌詞が国宝レベル。日本語詞の一つの完成形。「夜明けの歌」もほんとに沁みる。「涙よ止まれよ」とは言うが止まるわけがない。このアルバムに救われた人は多いかもしれない。僕も救われた。

 

19. Elliott Smith - XO (1998)

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 Elliott Smithの4th。高1で初めて聴いたときはピンと来なかったが、大学入学後メチャクチャ聴いた。繊細さに心が震える。ソングライティングのセンスが良過ぎる。「Baby Britain」の歌詞がとても好き。「the dead soldiers lined up on the table」のくだり、天才……試験官のバイトをしたとき何時間も立ちっぱなしで喋ってはいけないという状況に陥り、昼休みの30分マラソン選手の酸素補給のように息も絶え絶えこのアルバムをずっと聴いていた。だいぶ精神の支えになった。「Pitseleh」のピアノも素晴らしい……。

 

20. FISHMANS - 空中キャンプ (1996)

Kuuchuu Camp

Kuuchuu Camp

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 FISHMANSの5th。なんぼでも語れるアルバムなんですが手短に。ジャパニーズレゲエの完成形の一つ。今でいうvaporwave的要素もどこか感じられる。形容がしづらい。満たされてないんだけど満たされてるというか、満たされてるのに満たされてないというか。「幸せ者」がとにかく好きで。「みんなが夢中になって暮らしていれば別になんでもいいのさ」って、本当にその通りだよなあと思う。外部を志向しない考え方はここから来てるのかも。天才の仕事としか言いようがない。96年か…いやほんとありえんよなあ。これが『OK Computer』の前年て信じられなくないですか?

 

21. GRAPEVINE - Sing (2008)

Sing

Sing

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 GRAPEVINEの9th。日本のバンドでも特に好き。これと『Circulator』『another sky』『愚かな者の語ること』ぐらいまで絞ったが、泣く泣くこれに。GRAPEVINEは何出しても一定水準超えてくるので凄い。温かみのある「Sing」で始まり、ソリッドな「CORE」に続き、そして「Glare」。GRAPEVINEは光に関係した曲が多くて、これも「光」関連なのだが、まあ凄くて……たかが満ち足りた世界なあ。天才か??この後全部サビみたいな「ジュブナイル」が来て、で「Two」、そして「また始まるために」ベケットのオマージュなんだろうけど、これも好きなんですよ……「おそれ」と並んで、構成の妙が際立つ名曲。上手いこと言った!ってよりかはシンプルな一節に惹かれるタイプなので、「それは幻想かい?」がだいぶ効く。コミカルな「女たち」(ソレルス?)も良し、「スラップスティック」の安定性も良し、締めが「Wants」なのも良い…リスナーの感情の軌跡を追うように曲順が配慮されてるのが丁寧だと思う。超名盤。

 

22. Grouper - Ruins (2014)

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 Grouperの10th。Grouper、好き……ドローン/アンビエントの音楽をあまり聴かないけど、これはとても好み。ジャケットが良い。全編ピアノだけで、たまに環境音が入るのも良くて。寝る前によく聴く。どこまでも際限なく落ちていく感覚。カエルの鳴き声が心地いい。ピアノだけなのでリズムキープや角ばった骨子がなく、終わろうと思えばいつでも終われる、その鳴る音/鳴らない音を峻別しないという点でアンビエント的。サティの室内音楽とはまた違った、より肌感覚に近い一枚。

 

23. Kendrick Lamar - DAMN. (2017)

DAMN.

DAMN.

  • ケンドリック・ラマー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1528

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 Kendrick Lamarの4th。実はケンドリックのアルバムで一番好き。前作とは打って変わってサウンドもリリックも内省的。なんかよくわかんないけど好きなんだよなあ。「ELEMENT.」がとにかく好きで。PVも合わせて印象的な一曲。「Most of y'all throw rocks and try to hide your hand」うまい表現だよなあ。SNS時代の茫漠とした不安を捉えてるというか。自分のアイデンティティで悩んでた時期だった。「ain't nobody prayin' for me」は割と切実な問題だった。今でも解決していない。

※まず全体的に音が少ない。トラックが引っ張るというより、ケンドリックのラップで曲を引っ張るイメージがある。実際「DNA.」の後半はアドリブらしく、バスドラと「give me some ganja」のサンプリングしか鳴っていないから驚きである。「sex, money, murder are DNA.」本当にそうかはわからない。しかし血や宗教や人種が人間に与える影響は、僕達が感じているよりももっと大きいものなのかもしれない。

 

24. LOSTAGE - DRAMA (2007)

throatrecords.ocnk.net

 LOSTAGEの2nd。LOSTAGEのアルバムどれも良くて、正直過小評価されてるなあとよく思う。小文字表記時代のlostageは三人体制の今とまるで雰囲気が違う。死の匂いを感じるというか……。1曲目の「RED」が本当に格好良い。バチバチにヒリつくこの感じ。殺意を感じる。次が「こどもたち」なのが凄い。そして「ガラスに映る」なのも凄い。なんだろうなあ、とにかく乾いてて擦過傷的な感覚。lostage聴いてると熱的な熱さよりも傷の痛みの熱さを想起する。「ドラマ・ロゴス」本当に好きで。すべてが完璧な曲。空間の使い方が上手すぎる。「走り出した〜」でベース入ってくるの凄すぎ。100秒近いアウトロも凄い。なにかを失ったあとなんだけど、そのディテールが生々しすぎる感じ。邦ロックというか邦楽全般に共通するウェットな感じが全然ないのが怖い。異質。「名前」茫洋。「公園の裏の黒い蝉」こえ〜〜。「魚はオイルの中」超好き。アクアリウム感。最後が「海の果実」なのがニクい。凄まじい一枚。Pitchforkに評価されててもおかしくないくらい。邦楽の名盤としてもっと注目が集まるべきだと思います。個人的には54-71の『enClorox』に匹敵する。

 

25. Modest Mouse - Building Nothing out of Something (2000)

Building Nothing out of Something

Building Nothing out of Something

  • モデスト・マウス
  • インディー・ロック
  • ¥1528

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 Modest Mouseの、シングルとかEPの曲を集めたコンピ盤。コンピ盤といってもアルバムとしてすんなり聴ける。USインディーでも特に好き。凡百だがModest Mouseホント〜〜〜に歌詞がいい。「Never Ending Math Equation」出だしがI'm the same as I was as when I was 6 years oldなのも凄いんだけど、Infinity spirals out creationからの一連の歌詞も凄まじくて。「You ain't machines and you ain't land / And the plants and animals they all linked / And the plants and animals eat each other」どうやったらこんなの書けるの??オハイオ出身のバンドで、聴いてると西海岸の塩辛い空気がこっちにまで漂ってくるようでそれもいい。「Broke」も凄く好きで短編の元にしたことがある。「Whenever You Breath Out, I Breath In」は(Geniusによると)双極性障害の曲だそうで、アイザック・ブロックの苦悩がにじみ出ている。このアルバムには入ってないのだがEP『Interstate 8』の「Edit the Sad Parts」という曲がとても好きで。心の支えになった。「I made my shoes shine with black coal / But the polish didn't shine the hole」この一節にだいぶ胸が苦しくなる。感情の機微を捉えるのがひじょうに上手い。人生を八の字の高速道路になぞらえるセンス……。