legazpionmusic

音楽にかんすること。

レイハラカミについての断章

 僕がレイハラカミ(rei harakami)を最初に聴いたのはナンバーガールのレア音源集『OMOIDE IN MY HEAD 4 ~珍NG & RARE TRACKS~』所収のU-REIリミックスでのことだった。そもそもナンバーガールにリミックス音源があったとは想像だにせず、あんなバキバキのロックサウンドをどう電子音で有機的に調理するのか、ひじょうに不思議だった記憶がある。今聴いてみるとなるほど浮遊感があり、その音像の絶妙なマッチ具合にやはり不思議さを覚えずにはいられないが、当時どう考えていたのかは判然としない(最近むかしのことをどんどん忘れている。そのうち高校時代のことも記憶から消えるかもしれない)。
 高校当時、僕は毎週10枚TSUTAYA(もう潰れてしまった)で借りてきた音源を全部iPod Classicにぶち込んでちまちま聴いていた(高校三年になると経営難のためか10枚1000円キャンペーンは終わり、大学に入ってしばらくして僕はTポイントカードを更新しなくなった)。そこでおもに聴いていたエレクトロニカといえばAphex TwinSquarepusher、Burial、Underground、Boards of CanadaFour TetTelefon Tel Avivといった、要はひとむかし前のアーティストばかりで、もっぱらハードコアかマス・ポストロックばかり聴いていた。ロック耳でもわかる電子音楽家はどうしようもなく限られていたのである(当時も今もマニュエル・ゲッチングの『E2-E4』は好きです)。
 iTunesを確認するかぎりレイハラカミの『lust』をライブラリに追加したのは2017年の9月である。その前後は透明雑誌ギャラクシー500であり、eastern youthとFaith No Moreなのでかなり浮いている。じつは高校時代、というか最近になるまでレイハラカミはこれしか聴いてなかった。そのため僕にとってレイハラカミ=[lust]でありもっといえば[lust]=owari no kisetsuなのである。

[lust]

[lust]

music.apple.com

 はじめて(!注意!そんなもの憶えているわけないので「そういえばこんなだっけな〜」という薄い記憶で書いてます)聴いたときの印象は(それまで聴いてきた電子音楽からすれば)ややもすればシンプルで人懐っこい音という感じだった。それにこの音でこのジャケットなのもいい(EP-4の昭和大赦に似ている)。ちょっと寂しさが残って、「long time」で始まって、「joy」があって「after joy」があって…というエモ要素の過重積載に当時百合のオタクだった僕は大いに影響を受け、自分が書いた小説にも当アルバムを引用したくらいである。なにより信じられないのはRoland SC88-Proで曲が作られていることだ(YouTubeに上がっているデモ映像を見てもらえばわかるがひじょうにチープなMIDI音源が出る)。電子音楽の世界というのは日進月歩で、とにかく機材の新しさがものを言う界隈でありながら、レイハラカミは一貫して96年発売のDTM機材を使い続けた。どうやってあの音を作っていたのか不思議で仕方ないが、ある意味そこに込められたマジックこそあの純朴なサウンドの核にあるものなのかもしれない。