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音楽にかんすること。

【旧譜編】Albums of the Year 2021 (20→1)

・凡例は今年の年間ベスト記事を参照

 

20. Slave Ambient / The War on Drugs (4.50)

Slave Ambient

Slave Ambient

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2011, Secretly Canadian

 ウォー・オン・ドラッグスはめちゃくちゃいい。冬そのものといえる音の連なりもすばらしいが歌詞もいい。周期的なギターのリズムにハマること間違いなし。アメリカのインディー音楽の醍醐味。

fav: Brothers, I Was There, Your Love Is Calling Your Name

 

19. Prelúdio / Fabiano do Nascimento (4.70)

Prelúdio

Prelúdio

  • Fabiano do Nascimento
  • ラテンジャズ
  • ¥1528

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2020, New-Again

 ゆる〜いジャズハマりがあってよく聴いた。低い温度で燃えている炎のような音楽。ひじょうにカッコいい。いいな〜と思ってたらサム・ゲンデルとも組んでいたらしくなるほどと思った。

fav: Rio Tapajaós, Mental Azul

 

18. Selected Ambient Works Volume II / Aphex Twin (5.50)

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1994, Warp

 今年の2〜3月、なにも聴けなくなった時期によく聴いた。日中と就寝前、なにを聴いてもダメなのでこればかり聴いていた。茫洋とした気分によく合っていた(と思う。今はもうその精神状態から脱したのでよく覚えていないが)。ねこぢるが普段からよく聴いていたのもわかるが、これをずっと聴いていると飲み込まれるものがある…。

fav: #3, #4, #5

 

17. LP5 / Autechre (6.45)

LP5

LP5

  • Autechre
  • エレクトロニック
  • ¥1528

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1998, Warp

 今年下半期はオウテカにもハマった。どこから取っ付けばいいかわからない複雑な音楽性のために2、3枚アルバムを聴いてそれっぱなしになっていたが、これはめちゃくちゃいい(ついでに他のアルバムも聴き返すようになった)。「Rae」は本当に良い。ぼやっとした音像に輪郭のパキッとしたパーカッションが乗っかるとこんなにカッコいいのか…。冷たい鉄のような音楽。ベタだが『BLAME!』のサントラとして聴けると思う。

fav: Rae, Under BOAC, Drane2

 

16. Analog Fluids of Sonic Black Holes / Moor Mother (6.46)

Analog Fluids of Sonic Black Holes

Analog Fluids of Sonic Black Holes

  • Moor Mother
  • エレクトロニック
  • ¥1528

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2019, Don Giovanni

 ムーア・マザーは近年活動領域がいちじるしい、現代アフロフューチャリズムを領導する存在ともいえる(ラシーダ・フィリップスと共同でBlack Quantum Futurismというコレクティヴを主催している)。聴けばわかるが電子音だけとは思えないほど音が生々しく、その鋭利な物音や吐き捨てられる言葉は、不断に私たちに過去への応答を呼びかける。35分と短いながらも、これを聴くと意識になんらかの変容がもたらされるのは事実だと思う。ぜひ聴いてみてほしい(今年出た新譜もよかった)。

fav: Don't Die, After Images, Black Flight

 

15. Loop-Finding-Jazz-Records / Jan Jelinek (7.25)

Loop-Finding-Jazz-Records

Loop-Finding-Jazz-Records

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2001, Faitiche

 ヤン・イェリネクといえばこれ!って感じなのだろうか。しかしこれは本当にいい。いったい20年も前にどうやってこんな音を作ったんだろうか(しかも文字通りジャズのLPのサンプリングから)…小気味いいグリッチと揺れる音像が気持ちよく、何度でも繰り返せる。こんなにピッタリ来るような音はなかなか作れない。

fav: Moiré (Piano & Organ), Rock in the Video Age, Moiré (Strings)

 

14. Drooled and Slobbered / Dringe Augh (7.45)

Drooled and Slobbered (Deluxe Edition)

Drooled and Slobbered (Deluxe Edition)

  • Dringe Augh
  • シンガーソングライター
  • ¥1528

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2013, Electric Muse

 一聴して、ああニック・ドレイクがめっちゃ好きなんだろうな…と思うくらいニック・ドレイクみの強い音楽。冬によく合う。ギターがめちゃくちゃ上手く声もめちゃくちゃ良い。lastfmのページを見てみると聴いている人間が少なすぎてあんまりなので、本当にみんなに聴いてほしい。日本にもよく来てくれる。よければぜひ関西にも来てください。めっちゃライブが見たいです。

fav: Sea, Raffle, Pervert

 

13. New Ways / Leif Vollebekk (8.10)

New Ways

New Ways

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2019, Secret City

 リーフ・ヴォルベックはカナダのSSWで、管見のかぎり僕のTLで聴いている人はまったくいない(というより僕くらいしか日本語で彼について話していない)。なんかやたらレビューなんかの評価が低いが、ここまで良い音楽もなかなかないと思う。特に「Never Be Back」は今年のベストくらいには好きで、この曲だけ一時間ぶっとおしで聴いたりもしていた。寒々しい空気に芽を出した火のような音楽。ほんとうにたくさんの人に聴いてほしい。この温度感の音楽はなかなかない。

fav: Never Be Back, Hot Tears, Blood Brother

 

12. 4444 / Sam Gendel (8.16)

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2017, Terrible

 今年に大量にリリースされた音源を聴いてからこっちを聴いてみると、まったくアンビエント色が見えなくてかなりビビると思う。アコギ主体のMPB的なメロディ(その点ではアート・リンゼイに近い?)とジャズ感強めの録音が相俟ってめちゃくちゃ高クオリティのSSWの名盤を生み出している。サム・ゲンデル、どんな音楽やってもうまいな…と思う。この路線で進んだサム・ゲンデルも見たかった。

fav: Children of Earth, Promise Is, Less But Better

 

11. SWEATER / NOUGAT (8.28)

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2020, self-released

 ポストハードコアの鳴りの下、倦怠と怒りがないまぜになった感情が空虚に語られる。今年の2〜3月ごろ、抜け殻みたいになった時期によく聴いた(そのときの気分とおそろしくマッチした)。なぜ生きているのかもよくわからず、かといってその虚脱感が真実味のあるものなのかもよくわからず、もっと言えばそれだけの判断力が落ちていることすらよくわからない時期。NOUGATや5kaiのように、抜け殻になったような状態と躁状態が奇妙に同期している音楽は非常にまれだと思う。よいバンド。今年の新譜もめっちゃよかったです(あれを待ってから年間ベストを作ればよかった…)。

fav: DAY BY DAY, 白紙になる, VLADIVOSTOK

 

10. The Fawn / The Sea and Cake (8.30)

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1997, Thrill Jocky

「Sporting Life」がめちゃくちゃ好き。音の響きに寂しさがある。しかしこれが97年とは…と思うくらい音のイメージが古びておらず、それはシーアンドケイクの音楽性が一貫しているからでは…とも思うが、とにかく良い。曲間がつながっているのでアルバムまるごとスムーズに聴ける。いやしかしSporting Lifeは大名曲だと思う…ここまで微に入り細を穿った感情をなぜ鳴らせるのだろうか?

fav: Sporting Life, The Argument, The Fawn

 

9. Insen / Alva Noto + Ryuichi Sakamoto (10.42)

Insen

Insen

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2005, Raster-Noton

 アルヴァ・ノトと坂本龍一の共作はどれも良い!なかでも本作は出色の作品。間隔を置いて鳴るピアノ(グリッチ)と、その間隙を縫うように聴こえるグリッチ(ピアノ)の交感がうつくしい。ノイズと鍵盤の対照にあてられながらも、足元が揺らぐどこか不安なところもあり、それが音像そのものに説得的に作用していると思う。これが16年前というのだから驚き。寒々としながら暖かみがある/暖かみがありながらどこか寒々しく感じるのは、両者の代補的な役割によるものか。

fav: Logic Moon, Moon, Berlin

 

8. Screws / Nils Frahm (10.66)

Screws

Screws

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2012, Erased Tapes

 マイベスト入り。今年はポストクラシカルにハマっていろいろと聴いてみたが、ニルス・フラームのこれが一番よかった。音の運びが真似できそうなくらいとてもシンプルなピアノなのに、なぜだかこの人にしかできない、と思わせるようなすごみがある。読書中によく聴いた。9曲28分と短く、アルバム単位で繰り返し聴ける。何度聴いても飽きない/何度でも聴かせてくれる、静かな領域に揺曳するアンビエント。たしかな力を感じる。

fav: なし

 

7. PESTPOOM / 中華戦争 (11.25)

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2020, Ushirecords

 EPだが非常に好きなのでランクイン。ケッタイなバンド名とケッタイなアルバム名がいい。「台北的士」(大名曲)がほんとうに好きで、これだけアホみたいに聴いた。焦燥感と安堵感の配分がいい。SoundCloudに上がってる飲酒運転ver.も非常に良い。ライブがめちゃくちゃ見たい。ぜひ関西に来ることがあれば…

fav: 台北的士, 血まみれに見えた

 

6. The Nudes / Pele (11.37)

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2000, Polyvinyl

 サウンドを聴けばわかるようにペレはガッツリtoeの元ネタである。クリーントーン主体(というか演奏動画を見るに、エフェクターを一切使っていない(!?))のギターに手数の多いドラム、裏方に徹したベースと、ポストロックの条件をいいかんじに満たした良質なバンド。単なるBGM(この境界がとても危うい)に堕しない不思議なオリジナリティがある。浜風が感じられる音楽。

fav: Nude Beach. Pin Hole Camera, The Mind of Minolta, Visit Pumpy

 

5. grace / haruka nakamura (11.38)

Grace

Grace

  • haruka nakamura
  • エレクトロニック
  • ¥1528

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2008, schole

このアルバムは曲単位ではほとんど聴かず、一曲目を再生したらあとは最後まで聴き通してしまうことが多かった。これは本当に良い。サティが目指した意味での「家具の音楽」を志向していると思う。さながら私たちの影、私たちが普段まったく気にも留めないような物たちの群れ。音楽だけで「リズと青い鳥」を表現するとこんな感じになるんじゃないだろうか。ただ不思議なことにあまりに日常に馴染みすぎているためか何回聴いても聴いた気がしない(?)。無意識にまで浸透した、「(This Must Be) The Place」とも呼ぶべき場所から鳴る音楽といえよう。

fav: なし

 

4. Slow Glass/Farewell Echoes / SORASO (11.66)

soraso.bandcamp.com

2018, self-released

マジでみんなにSORASOを聴いてほしい。SORASOは仙台のバンドで、リリース作品こそ(まだ)少ないが楽曲のクオリティがおそろしく良い。一条の光芒そのもののような音楽。さながら今漕ぎ出したばかりの小さな小さな舟…「How Far is a Light Year?」が個人的に一番好き。ここまで切な希望を歌った音楽は本当に稀少だと思う。本当にすごい。もっといろんな人に聴いてほしい(のであちこちでオススメしている)。よければシングル「幻灯機」のほうも聴いてほしい。これを聴き終えるとまるで一本の良質なセカイ系映画を観終えた気分になる。新海誠はなぜSORASOを起用しないのか?

fav: How Far is a Light Year?, Philadelphia, 三月の舟

 

3. Judee Sill / Judee Sill (14.72)

Judee Sill

Judee Sill

  • Judee Sill
  • シンガーソングライター
  • ¥1630

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1971, Asylum

マイベスト入り。去年から聴いてたが今年のほうがよく聴いたので。(個人的に)ニック・ドレイクの声にはストリングスが合わないのだがジュディー・シルの声とはものすごく相性がいい。音が温かい。演奏がめちゃくちゃ上手い。神話的な歌詞が1〜2分の曲でさらっと語られる(この「なんでもなさ」の見せ方がすごい)。アルバムが「Abracadabra」の突然やたら壮大なオーケストラで終幕するので聴くたびに笑ってしまう(いまだにここがよくわからない)。しかしなにはともあれ天才である。もっと長生きしてほしかった…

fav: The Phantom Cowboy, The Lamb Ran Away With the Crown, Lady-O

 

2. 公衆道徳 / 公衆道徳 (17.37)

公衆道徳

公衆道徳

  • 衆道
  • シンガーソングライター
  • ¥1375

music.apple.com

2015, Cho Hyunjoon

マイベスト入り。公衆道徳は現在、空中泥棒(Mid-Air Thief)に名義を変えて活動している韓国のアーティストである。邦題が変なら曲も変で、あちこちから飛び道具的にいろんな音が高密度に鳴るので、一度聴いただけでは旋律をまったく覚えられない。これは本当にすごい。リスナーに対する信頼がなければこんな音楽は作れないだろう。「地震波」のアコギの単音から一息に視野が広がる感覚、「沼地」の反復による交感は驚愕である。これを聴くと爆笑してしまう。すばらしいバランス。大傑作。

fav: 地震波, ウ, 沼地

 

1. Pet Sounds / The Beach Boys (26.76)

music.apple.com

1966, Capitol

今年の9月、電撃的に《理解》ったタイミングが訪れ、それ以降狂ったように聴いていた。一時期は目覚めに一周、日中にとりあえず一周、就寝前に一周していた。この世のものなのだろうか?と疑ってしまうほど美しいコーラスに、中学生レベルの単語しか出てこないきわめて抽象的な歌詞…デビューから66年までのアルバムをひとわたり聴いてみたけど、これだけ明らかに毛色が違う。なにかが降りている。いやこの世界のほうがそれを前にして降りてしまったと言うべきか。B面の流れがとても良い。ここまで純粋なものを純粋なままパッケージングできているというのが驚異的だ。どこまで行っても「死」が揺蕩っているような、そんな一枚である。マイベスト入り。

fav: God Only Knows, I Know There's an Answer, Caroline No