legazpionmusic

音楽にかんすること。

my essential 50 albums (26〜50)

26. Nas - Illmatic (1994)

Illmatic

Illmatic

  • Nas
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1630

music.apple.com

 Nasの1st。聴けば聴くほど味が出てくる一枚。これも超好きだな。よく聴いた。「Life's a Bitch」が自分の金科玉条だった。「Life's a bitch and then you die / that's why we get high cause you never know when you gonna go」明日死ぬかもしれない状況下で歌われるきわめてアクチュアルなメッセージは、僕にも同様強い意味をもっていた。「The World is Yours」今さら言葉を重ねる必要もないが、リリックが本当に天才。なぜここまで惹きつけられるのかわからないが、たぶんフロウが強いからかもしれない。「born alone die alone no crew to keep my crown or throne」の一節に勇気づけられる。ベースの音も良い。「Represent」も好き。なにかと戦っていた。それが何だったのか今でもわからない。

 

27. Neil Young - After the Gold Rush (1970)

music.apple.com

 Neil Youngの3rd。これもほんとに良いアルバムで。高音でゆらゆらするニールヤングの声がとにかく好き。受験期によく聴いた。「After the Gold Rush」わけわかんない歌詞だけどいい。「Only Love Can Break Your Heart」人生の名曲というか。このメロディでこんなこと言われたら頷くしかないよなあ、という。「Birds」は葬式で流してほしい。温かみのある歴史的名盤。カントリーはいまいちピンとこないが、これはグッとくる。

 

28. Nick Drake - Pink Moon (1972)

Pink Moon <a href=*1" title="Pink Moon *2" class="itunes-embed-image" />

Pink Moon *3

music.apple.com

 Nick Drakeの3rd。僕の人生のサウンドトラック。すべての根幹にこれがあるといっていい。これと出会ってなかったら今頃大変なことになっていたかもしれない。感情の横溢で客観的な分析ができない。表題曲以外全編ギターの弾き語りで、編曲もされてないデモテープみたいな一枚なのだが、まあとにかく素晴らしくて。容易に時代を超えてくる。ギター1本で弾いているとはとても思えないし、72年にこれが存在したのも信じられない。奇跡みたいな一枚。どれだけ言葉を尽くしても足りない気もするし、言葉で表現すべきではないのかもしれない。アシッドフォークの文脈で語られることが多いが、ほかのアシッドフォークのSSWにはまったくアンテナに引っかからない。「ニックドレイクみたいな音楽」はこの世に存在しないし、絶対に真似できない。これまで現れたこともなければ金輪際現れることもないだろうアルバム。100年後も余裕で聴かれると思います。暗い/明るいを超えた彼岸にある。

 

29. NUMBER GIRL - SAPPUKEI (2000)

music.apple.com

 NUMBER GIRLの3rd。ザゼンからナンバーガールに入って、金切り声を上げるギター、バキバキのドラム、ゴリゴリのベース、音割れする録音、博多弁で怒鳴り散らす向井秀徳にビビった思い出。こんな音楽あってもいいのか??と感じた。ナンバーガールにはとことんハマった。B面を集めライブ音源を集めデモ音源を集めた。どのアルバムも好きだが一応これに。「ABSTRACT TRUTH」の「本質なんてどこにもない」に妙に納得していた。「TATTOOあり」の歌詞がとにかく好きで。「右肩 刺青 明け方 残像」これでハッキリ情景が出てくるのが凄い。向井の詞には恐れ入る。田渕ひさ子のギターも凄まじい。「殺風景」なんだよな。自分もたしかにその風景の中にいるがそれも気に食わない。鬱屈とした気分によく調和していた。

ナンバーガールは現代都市の冷酷無惨な側面を背景にしたものが多く、『SAPPUKEI』ではそれが色濃くあらわれていて、「一昨年の事件を誰も覚えておらんように/俺もまたこの風景のなか消えていくんだろうか」(ZEGEN VS UNDERCOVER)のような、一種ペシミスティックな雰囲気が作品全体に重くかかっている。「殺風景」はそうした都市の倦怠感を如実に示している、と思う。

 

30. Pavement - Crooked Rain, Crooked Rain (1994)

music.apple.com

 Pavementの2nd。Pavementもハマった。B面デモ音源ライブ音源なんでも集めた。これを発端にUSインディーに傾倒していった気がする。TSUTAYAにはベスト盤くらいしか置いてなくて、ブックオフでこれを最初に見つけて何度も聴いた。夏の暑い時期にピッタリだった。歌も演奏もヘロヘロで、お世辞にもうまくないんだけど、その肩透かしが妙に好きで。「Elevate Me Later」のコーラスなんて最高。歌詞もいいんだよなあ。ずーっとわけわかんないけど、突然グッとくることを言う。「And I wouldn't want to shake their hand / 'Cause they're in such a high protein land」本当に良いこと言うよなあ。スティーブン・マルクマスは天才。サウンドプロダクト的には全然ローファイじゃないけど、ローファイ的な空気を出すのがうまい。「Gold Soundz」もまぁ〜〜〜〜好き。真夏の太陽を感じさせるギターに、これでもかとエモい歌詞が乗っかる。「I keep your address to myself / 'Cause we need secrets」これと2番の歌詞は全部凄い。素晴らしすぎる。神がかっている。なんでこんなの書けるんだ。「Range Life」も残暑を感じる。「Fillmore Jive」のギターワークは圧巻。『Brighten the Corners』と『Terror Twilight』も好きで言葉がとても足りないがこの辺で。

 

31. Pink Floyd - The Dark Side of the Moon (1973)

music.apple.com

 Pink Floydの8th。これもだいぶ影響を受けた。中3の頃洋楽を聴き始めて「名盤」と聞くと決まってこれにぶち当たり、「Time」を聴いて「こんな歌詞があってもいいのか!!ていうか40年前ってどういうこと??」という衝撃を受けた。イントロが2分50秒あっても誰からも怒られないんだなあ…とも。いわゆる音楽の自由性とアルバム通して聴くことの意味を教わった。曲の前と後が繋がってて、通しで一曲になってる!すげえ!!と。まぁ筆舌に尽くしがたい。「The Great Gig in the Sky」なんて言葉で語るべきではないとも思う。「Money」の長大なギターソロも驚いた(一時期全部口笛で吹けてた)。「Eclipse」の最後40秒の沈黙に、音楽の構成の妙を感じ取った。世界が広いことを知らしてくれた一枚。

 

32. Pixies - Doolittle (1989)

music.apple.com

 Pixiesの2nd。「Debaser」にやられる。こんな歌い方アリなんだな〜〜と思った。メンバーのビジュアルにもびっくりした(高1当時ロックバンドというのは美男美女がやるものだと考えていたため)。センスのいいポップソングが並ぶ。ニルヴァーナはいわゆるquiet & loudをここから受け継いで応用させたが、「Tame」にその原型がある。「Hey」もとても良い。ポッカリ心に穴が空いた感覚をこうも表現できるとは。ギターの使い方が上手すぎる。Modest Mouseもそうだけど、わめくボーカルが好きなんだろうな。これが90年代に出てたらと思うとやりきれない。

 

33. R.E.M. - Automatic for the People (1992)

Automatic for the People

Automatic for the People

music.apple.com

 R.E.M.の8th。高1のときはまったく響かなかったが、最近になってとんでもない大傑作だと気づく。前作『Out of Time』が陽の名盤とすれば、こっちは陰の名盤か。美メロの洪水。曲順もあざやかで飽き足りない。もはやロックバンドの域を超えているが、その音の使い方は隙がない。「The Sidewinder Sleeps Tonite」なんか下手すればストリングスが陳腐になるところをギリギリのバランス感覚で免れている。力の抜きどころをわきまえている感じ。「Man on the Moon」→「Nightswimming」→「Find the River」の並び。この世のものとは思えない。これを聴きながら死んだカートコバーンの気持ちがなんとなくわかる。

 

34. Radiohead - The Bends (1995)

music.apple.com

 Radioheadの2nd。洋楽アーティストで一番好きなバンド。Radioheadに門戸を開いてもらったといっても過言ではない。これと『OK Computer』と『Kid A』と『In Rainbows』は同率一位。人間の感情の全部がある。全部シングルカットされてもおかしくない曲だらけで、この時期のB面も良曲ぞろい。アコギ+ギター+ギターの組み合わせで作れる音楽としては最高傑作の部類だと思う。まあ並びが完璧。「High and Dry」の歌詞には共感しかなかった。音楽に代弁してもらうことが多かった。「(Nice Dream)」の川の流れみたいなアコギが、かと思えば次の「Just」では暴力性をむき出しにする。「Bullet Proof...I Wish I Was」も良くて、一時期こればかり聴いていた。Radioheadの凄い点は、技術で圧倒したり、尺を引き伸ばしたり、新奇なコードやチューニングを使わずに、要は真似しようと思えば誰でも真似できるシンプルさで、既存のバンド音楽を打ち破ったところにある、と感じる。精神の支えになってくれた素晴らしい一枚。

 

35. Rage Againt the Machine - Rage Against the Machine (1992)

music.apple.com

 Rage Against the Machineの1st。28年前。とても信じられない。レイジを聴いたときの脅威は計り知れない。ジャケットもそうだが、サウンド、メッセージ、精神性、どれをとってもまったく古びていないところが恐ろしい。高水準の緊張感と体制への敵愾心。音楽と政治が化学反応を起こすと時に大傑作が生まれる。メンバー全員の存在感が均等なのも凄い。「Bombtrack」の緊張感溢れるイントロ。「Killing in the Name」のある種のカタルシス。個人的に思い入れ深いのは「Settle for Nothing」と「Know Your Enemy」。どちらもザックデラロッチャの鬼気迫るボーカルに揺さぶられる。「I try to grip my family but I slipped」「No-one's here to catch me when I fall」このメッセージをアメリカという国が必要としていた時代。今でも変わらない。レイジのメッセージは今でも色あせない。

※妥協、画一化、同化、服従、無知、偽善、残虐さ、エリート、これらすべてがアメリカンドリーム、敵だと訴えかける「Know Your Enemy」。僕はこの曲の終わりまでザック・デ・ラ・ロッチャが叫びつづける「All of which are american dreams」という言葉が忘れられない。19世紀から20世紀へかけてアメリカへなだれ込んできた移民の手に入れようとした夢、弱者をたぶらかすのに都合のいい夢は、すべて虚偽なものでしかないと、怒りをもって告げられるのは、耳が痛いようにも思えるし、最高のカタルシスに近いとも思える。

 

36. Red House Painters - Old Ramon (2001)

Old Ramon

Old Ramon

  • レッド・ハウス・ペインターズ
  • ロック
  • ¥1528

music.apple.com

 Red House Paintersの6th。大傑作。高2の夏休みに模試かなんかの帰りでディスクユニオンに寄って、たまたま置いてあったこれを手にした。10曲72分という長大さながら何度でも聴ける。荒涼とした大地をトラックでひた走るイメージ。BPMがとにかく低く、AメロBメロCメロサビという展開を何度も繰り返すが、これが本当に良くて。自然に眠ってしまう。詞も素晴らしい。「Void」これを聴くと存在しない遠い昔を思い出せる。「Between Days」めちゃくちゃ好きなんだよなあ。日々の間に埋もれたものを掘り起こす感じが…。これ以降マークコズレックにハマって、色々とディスコグラフィーを漁り出した。ライブ音源はなんぼでも聴ける。くるりの岸田も指摘していたが、バンドでもソロプロジェクトでもソロでも、マークコズレックの音楽性は大して変わらない。青写真のままパッケージングしてるというか。だからギター1本のライブ音源でも違和感がないのかもしれない。バンドバージョン/アコギバージョンという二分法が存在せず、渾然一体としている感じ。

 

37. rei harakami - lust (2005)

[lust]

[lust]

music.apple.com

 rei harakamiの4th。素晴らしい一枚。細野晴臣のカバー「owari no kisetsu」が本当にいい。去年の年末工場バイトで精神的に死にそうになったとき、これを聴いて安定を保っていた。音の使い方がひじょうにうまい。なによりこの音像にこのジャケット、「lust」という名前をあてがったことが素晴らしい。エレクトロニカに関しては初心者で大して聴いてないのだが、それでもこのアルバムは傑作だといえる。時間を超えた無窮のかなたにあるんじゃないかというくらい美しい…これ以上言葉が出てこない。

 

38. Slint - Spiderland (1991)

music.apple.com

 Slintの2nd。今まで聴いてきた中で一番影響を受けた一枚。僕が音楽の好みを決定づける時の指標になっているアルバム。アートワーク、反復、静と動、緩急、緊張感、サウンド、すべてが奇跡じみていて、こんなのを作られてしまったら、あとでどんなものを作ろうと思っても全部これの模倣になるしかない。情報があまりに少ない。CDにはブックレットもなにもなくジャケットの紙が挟まれてあるだけで、裏にも曲目が書いてあるのみ。「Breadcrumb Trail」ギターのハーモニクスで始まる。ボーカルがボソボソしゃべって、しばらく反復が続いて、そして轟音。この時点でだいぶやられる。音楽的クールさの極みというか。ギターが終始クリーントーンなのも覚悟を感じる。この緊張感は「Washer」で頂点に達する。この世で一番格好いい曲といっていい。タメと解放の配分が絶妙で、こんなのを作ったらあとの人生遊んで暮らせるくらいの金を貰っても十分なくらい。とにかく化け物じみている。どの音楽的文脈からも逸脱している。なにかが取り憑いているとしか言いようがない。どんな精神状態でこれを作ったのか。ギターのディストーションはこのバンドのために存在する。

 

39. Sun Kil Moon - Tiny Cities (2005)

music.apple.com

 Sun Kil Moonの2nd。『Ghosts of the Great Highway』『Admiral Fell Promises』『Benji』と悩んでこれに。マークコズレックによるModest Mouseのカバーアルバム。同郷なので通じるところがあるのかもしれない。カバーとは言うが歌詞以外全部オリジナルといっていい。自分の曲はことさら引き延ばすくせに他人のカバーとなると2、3分にカットするあたりがセコいが、まあとにかく素晴らしい一枚。評価は低いが(Pitchforkで3点!)そんなのどうでもいいくらい。正直「Space Travel is Boring」はこっちのほうが断然好み。ライブでもよく演奏する「Four Fingered Fisherman」も大変良い。「Tiny Cities Made of Ashes」「Ocean Breathes Salty」もとても好き。インドネシア旅行でマレーシアでのトランジットの際、くたくたに疲れながらこれを聴いて精神の安定を保っていた。名盤、とまでいかないが、個人的に好きな一枚。

 

40. Syrup16g - HELL-SEE (2003)

HELL-SEE

HELL-SEE

music.apple.com

 Syrup16gの4th。シロップにもずいぶん支えてもらった。『COPY』『coup d'Etat』と同率。healthy、地獄を見る。終わらない日常をシーンごとに切り取ったようなアルバム。モコモコした録音と吐いて捨てるような歌詞。五十嵐隆は稀代のメロディーメーカー。余裕のない人間の苦し紛れのジョークは決して笑えないが、それでも抑えきれず笑ってしまうことがある。そのときにこそ一番の絶望を感じる、と思う。「不眠症」がまさにそうで。「Hell-see」が一番好み。戦争との距離感があまりにリアル。底抜けに明るいメロディにうそ寒いほど暗鬱な歌詞が盛り込まれる。思い入れが強くて言葉にしづらい。「I'm 劣性」の歌詞には共感しかない。シロップは行間がうまい。詞と詞、曲と曲、音と音の間をよくふまえているというか。「ex.人間」→「正常」にその印象が強い。一瞬立ち直れそうになってやっぱり元通り、という感覚。覚えがありすぎる。

 

41. This Town Needs Guns - Animals (2008)

Animals

Animals

music.apple.com

 TTNGの1st。ポストロックの名盤。複雑で繊細なギターをバンドサウンドに完璧なまでに落とし込んだ一枚。アルバム名と曲名からコンセプトアルバム的な構成になっているかと思えばそうでもない。まあギターがとにかく美しい。日本でいうichikaに近い。そのギターをバンドサウンドの一つに組み込む技術もさることながら、曲構成も巧みで。12年前だが余裕で聴ける。全編アコースティックのセルフカバーアルバムもあるのだが、こちらも大変良い。「Panda」までの流れがとても好き。感情の奔流という感じ。

 

42. toe - the book about my idle plot on a vague anxiety (2005)

music.apple.com

 toeの1st。これもヒジョ〜〜〜〜〜〜〜に好き。『The Bends』『Pink Moon』『Spiderland』と並んで僕の人生に欠かせない一枚。全編インストなのが信じられない。いつ聴いても何度聴いても飽きない。朝に聴いて気分をリフレッシュすることが多い。どの曲も本当にいいのだが、「i do still wrong」が特に好き。ブレイクに入る絶叫が非常に格好いい。ただのヒーリングミュージック(それもいいが)に堕しない十分な魅力が、Ghosts and Vodka的な音作り、手数の多いドラム、ギターの絡みなどにあらわれている。冗談抜きでドラムが歌っている。静かな音調にエネルギーがたぎっているのが感じられる名盤。

 

43. ZAZEN BOYS - すとーりーず (2012)

すとーりーず

すとーりーず

music.apple.com

 ZAZEN BOYSの5th。はじめて聴いたときは変な曲展開と冗漫にしか聞こえない歌詞に面食らったが、何度も聴くうちにすばらしいアルバムだと気づく。36分というコンパクトさにセンチメンタルな一瞬がたびたび訪れる。「はあとぶれいく」→「破裂音の朝」が特にいい。向井秀徳は詞がうまい。本作からさかのぼる形でアルバムを聴いていったので、1stの「自問自答」にはけっこう驚いた。向井はこの問題意識をどこにやったのかと当時は勝手に失望していたが、別にそれは向井が『すとーりーず』的なアルバムを作ることとなんら矛盾しないし、問題意識を捨てたわけでもない。とにかく良い一枚。しかしこれ以降まだ新譜が出ていない。

 

44. The Zombies - Odessey and Oracle (1968)

music.apple.com

 The Zombiesの2nd。美メロに次ぐ美メロ。人智を超えた美しさ。受験期に元気をもらった。イントロの「Care of Cell 44」がひじょうに良い。60年代にこれを作る奇跡。ピアノを基調とした曲が続く。「A Rose for Emily」「Brief Candles」など文学作品から題材が取られているのもいい。「Hung Up On a Dream」は言葉が出てこない。夢だとわかっていながらもこの夢にすがりつかずにはいられない。「This Will Be Our Year」は言わずもがな。時代を容易に超えてくる凄みがある。文句のつけようがない名盤なのだが、一つだけ、なぜ最後に「Time of the Season」をもってきたのかがわからない。間違いなくゾンビーズを代表する名曲ではあるのだが、流れ的になんか噛み合わない感があるというか。しかしそれを差し置かずとも歴史に名を残す大傑作。

 

45. スピッツ - ハチミツ (1995)

Hachimitsu

Hachimitsu

music.apple.com

 スピッツの6th。中学生の頃死ぬほどハマった。今も好き。「ロビンソン」はショックだった。存在しないノスタルジーを喚起するアルペジオと聴き手に決してイメージを押し付けない歌詞に、当時の流行の音楽に飽き飽きしていた僕はスピッツが理想のバンドだと感じ、ベスト盤をずっと聴いて歌詞考察ばかりしていた(中学生あるある)。アルバムを聴いたのは高校に入ってからだが、同時代の『The Bends』と十分にタメを張れる素晴らしいセンスの一枚。シングルがとにかく強い。「愛のことば」がひたすら良い。というか全曲シングルカットできる域にある。スピッツは90年代でもアルバムの作り方がLP志向で、そこに先見の明を感じるというか。去年発表されたといわれても多分信じられるアルバム。実は日本で一番Radioheadに接近しているのはスピッツなんじゃないかとたまに思う。

 

46. パラダイス・ガラージ - 実験の夜、発見の朝 (1998)

www.amazon.co.jp

 パラダイス・ガラージの6th。日本の音楽でもだいぶ特異な位置にあるという所感。「僕は間違っていた」アコギの弾き語りなのだが終始異様な雰囲気にあり、後半に爆音とノイズで「僕は間違っていた」という言葉が繰り返され、次にロック的な「City Lights 2001」が続く。参加メンバーがかなり豪華で、ソロ作品なのだが打ち込みなんだかバンド音楽なんだか本気なのか冗談なのかわからないような曲が並ぶ。しかし突出したポップセンスはどれにも通底していて、個人的には「深夜放送」が好き。「I love you」も本当にいい。これ以降豊田道倫の音源を集め、ライブにも行った。良いアルバム。

 

47. ペトロールズ - Renaissance (2015)

www.amazon.co.jp

 ペトロールズの1st。活動10年目でのデビューアルバムだけあってほとんどベスト盤である。受験期に何度も聴いた。長岡亮介がギターを始めるきっかけになった。エフェクターをかけないクリーントーンでここまで聴かせられるのかとライブ映像を見てびっくりした。なにより最小限の構成なのがいい。この音数でも音楽は成立するんだなあとBlack Diceを聴いたときと同じことを考えた。「タイト!」に始まり、アルバム本編もとにかく隙がない。捨て曲云々では語れない一枚。「Profile」は7分あるとはとても思えない。上手いギタリストは音の鳴っていない空間にも弦の響きを感じると最近よく思う。ペトロールズはその最たる例といえる。相当な技術がなければこの音にはできない。名盤。

 

48. ポルノグラフィティ - WORLDILLIA (2003)

music.apple.com

 ポルノグラフィティの4th。人生で初めて買ったアルバム。名盤によく上がるのは『ロマンチスト・エゴイスト』だが、思い出の観点からこっち。中学生の頃PSPに何曲か入れてずっと聴いてた。「CLUB UNDERWORLD」を一曲目にもってくるのが凄い。「惑星キミ」で早々にその印象を絶っているのも凄い。「元素L」「Go Steady Go!」「カルマの坂」がほんとうに良い。「渦」みたいなポルノの暗めなシングルがむかしから好きだった。アルバムバージョンのパーカッションも良い。ポルノグラフィティやっぱり好きなんだよなあ。人格形成の面でだいぶ強い。でもやっぱり『ロマンチスト・エゴイスト』も良い。アポロとか、よくアウトロぶつ切りにしようと思ったよなぁ…という。

 

49. 山下達郎 - RIDE ON TIME (1980)

www.amazon.co.jp

 山下達郎の7th。vaporwaveの文脈で聴き始める。「SOMEDAY」が本当に良くて。イントロからの音の積み重ね方が本当に天才的。「Plastic Love」もそうなのだが、山下達郎は音をとにかくたくさん配置するけど、その配置が絶妙なので聴いていてまったくストレスにならない。ピアノ、コーラス、ベースラインどれをとっても完璧。これが40年前なのは軽く脅威。それでまた「RIDE ON TIME」までの流れも素晴らしい。B面に入ると静的な曲が並ぶ。山下達郎のポップセンスには敬服せざるをえない。これと前後してリリースされた『SPACY』と『FOR YOU』もたいへんいい。令和でも充分に通用する。

 

50. 54-71 - enClorox (2002)

www.amazon.co.jp

 54-71の5th。日本で一番ソリッドな音楽をしていたバンド。一時期ハマって音源を集めた。日本のRATMだと勝手に思ってる。「humpty empty mellow blues」がとにかく良い。スタジオ音源でも緊張感が伝わってくる。ミスタッチした瞬間に殺されるんじゃないかというぐらいの緊張感。思い切りアメリカン・ハードコア的な空気で、実際本作もアルビニのスタジオで作られたのだが、事実上最後のアルバムになったアルビニ録音の『I'm not fine, thank you. And you?』はそんなに好きじゃない。ヒップホップとロックを横断するバンドだが、ミクスチャーかと言われると疑問の余地がある。とにかく独特。翌年の『true men of non-doing』はもっと音数が少ない。しかしこの音の少なさが逆に密度=緊張感を高めているというか。音がよくて程よくポップなところもある名盤。54-71のこの意匠を受け継いでいるのは空間現代か。

*1:Remastered

*2:Remastered

*3:Remastered